パートナーの浮気が発覚したとき、心の傷の深さと共に、頭をよぎるのは「この裏切りに対して、正当な代償を求めたい」という当然の権利、すなわち「慰謝料請求」ではないでしょうか。
しかし、慰謝料請求は、単に感情をぶつけるだけでは成立しない、厳格なルールに基づいた法的な手続きです。知識がないまま進めてしまうと、本来得られるはずだった権利を失ったり、逆にあなたの立場を不利にしてしまったりする危険さえあります。
この記事は、あなたが法的な交渉の場で、そして裁判で「勝つ」ために必要な知識を網羅した完全ガイドです。
法律の専門家である弁護士の監修のもと、「慰謝料請求の根本的な条件」から「具体的な請求手順」、そして「慰謝料の相場」まで、あなたが知りたい全てを、専門用語を避け、分かりやすく解説します。
慰謝料請求の根幹|法が定める「不貞行為」とは?
まず、最も重要な大前提から理解しましょう。法律上の慰謝料請求の対象となる「浮気」とは、「不貞行為(ふていこうい)」を指します。
これが、慰謝料請求が認められるか否かを分ける、絶対的な境界線です。
どこからが「不貞行為」で、どこからが違うのか?
| 行為 | 不貞行為にあたるか? | 解説 |
|---|---|---|
| 性交渉・肉体関係 | ◎(明確にあたる) | これを証明することが、慰謝料請求の最大の目標です。 |
| ラブホテルへの出入り | ○(強く推認される) | 性交渉がなくとも、長時間滞在した場合などは、肉体関係があったと強く推認(=事実上あったと判断)されます。 |
| 浮気相手の自宅での外泊 | ○(強く推認される) | ラブホテル同様、不貞行為があったと判断される可能性が極めて高いです。 |
| キスや抱擁 | △(判断が分かれる) | これだけでは不貞行為とは断定されにくいですが、婚姻関係を破壊する行為として、慰謝料が認められるケースもあります。 |
| 親密なLINE・メール | ×(原則あたらない) | いわゆる「プラトニックな関係」では、原則として不貞行為にはあたりません。 |
| 二人きりでの食事・デート | ×(原則あたらない) | これだけでは、慰謝料請求の直接的な理由にはなりません。 |
慰謝料は誰に請求できるのか?
不貞行為は、あなたのパートナーと浮気相手の「共同不法行為」と見なされます。そのため、あなたは以下の両方、またはいずれか一方に対して、慰謝料を請求する権利を持ちます。
- あなたの配偶者
- 浮気相手
例えば、慰謝料額が200万円と算定された場合、「配偶者に200万円」「浮気相手に200万円」と二重に請求できるわけではなく、二人に対して合計で200万円を請求できる、という形になります。どちらに、どのような割合で請求するかは、あなたの戦略次第です。
慰謝料の相場はいくら?金額を左右する要因とは
慰謝料の金額は、法律で明確に定められているわけではありません。過去の裁判例などから、ある程度の相場が存在します。
| ケース | 慰謝料の相場 |
|---|---|
| 浮気が原因で離婚した場合 | 200万~300万円 |
| 離婚はしないが、浮気が原因で別居した場合 | 100万~200万円 |
| 離婚も別居もせず、婚姻関係を継続する場合 | 50万~100万円 |
慰謝料が「増額」する要因
上記の相場はあくまで目安であり、以下の要素によって金額は変動します。
- 不貞行為の期間・頻度:(長いほど、多いほど高額に)
- 婚姻期間の長さ:(長いほど高額に)
- 子どもの有無:(未成年の子がいる場合、精神的苦痛が大きいと判断されやすい)
- 浮気相手が妊娠・出産したか
- 不貞行為の悪質性:(あなたが妊娠中や病気の間の浮気など)
- 相手の社会的地位や収入
- 反省の度合い:(謝罪がなく、不誠実な態度を続けるなど)
慰謝料請求までの具体的な3ステップ
では、実際に慰謝料を請求するには、どのような手順を踏むのでしょうか。
ステップ1:【最重要】証拠の確保
全ての始まりは、ここからです。前述の通り、「不貞行為を証明できる客観的な証拠」がなければ、どんな交渉も裁判も始まりません。
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どのような証拠が法的に有効か、その「強さ」を理解することが、調査のゴールを明確にします。
この段階で、言い逃れのできないレベルの証拠(ラブホテルへの出入り写真など)を確保できるかどうかが、あなたの未来を決めると言っても過言ではありません。
ステップ2:内容証明郵便による請求
証拠が確保できたら、まずは相手方に対して「慰謝料を請求する」という意思を、公式な形で伝えます。この際に使われるのが「内容証明郵便」です。
これは、「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスで、後々の裁判などで「そんな手紙は受け取っていない」という言い逃れを防ぐ効果があります。通常、この文書は弁護士や行政書士に依頼して作成します。
ステップ3:交渉 → 調停 → 訴訟(裁判)
内容証明郵便を送付した後は、以下の流れで解決を目指します。
- 示談交渉:当事者同士(通常は双方の代理人弁護士)が話し合い、慰謝料の金額や支払い方法について合意を目指します。ほとんどのケースは、この段階で解決します。
- 調停:話し合いで合意に至らない場合、家庭裁判所で調停委員を交えて、再度話し合いを行います。
- 訴訟(裁判):調停でも合意できない場合、最終的に裁判官が法的な判断を下す「裁判」へと移行します。
【要注意】慰謝料請求には「時効」がある
慰謝料を請求する権利は、永遠ではありません。「時効」というタイムリミットが存在します。
- あなたが「不貞行為の事実」と「浮気相手の身元(氏名・住所)」の両方を知った時から3年
- 不貞行為があった時から20年
―慰謝料請求の時効―
「いつか考えよう」と問題を先延ばしにしているうちに、あなたの正当な権利が消滅してしまう可能性があることを、決して忘れないでください。
まとめ:正しい知識が、あなたを有利な未来へ導く
慰謝料請求は、感情的な復讐ではなく、あなたの受けた心の傷に対する、正当な補償を求める法的な権利です。そして、その権利を現実のものにするためには、正しい知識と、それを裏付ける強力な証拠が不可欠となります。
法的な手続きの第一歩であり、最も重要な「証拠の確保」。
弁護士が法廷で戦うための“武器”を作るのは、調査のプロである探偵の仕事です。あなたがもし、法的な解決を少しでも視野に入れているのであれば、まずは「自分の持っている情報や証拠が、法的にどこまで通用するのか」を専門家に相談してみることを強くお勧めします。

